カテゴリー: 万年筆の軌跡

それはどこからともなく浮かんだ文字軍。
溢れる感情を文字という記号に落とし込んだ濁流。

  • 軌跡

    ぱちぱちと鮮やかに鮮明に瞬きどこまでも付いてきてくれていた星々たち

    さざめく光の波に打ち寄せられ溺れそれでも伴う

    鋭い一閃を閃かせた牙はしかしそれを否定するものではなかった
    ただ軌道を用いて線引きをした

    闇はいつしかまた暗がりへと溶け輝くそれらを眺める

    共にかけた電子の海の思い出

    危うくもどこか美しいそれを形に残したいと思うのは自然だろうか

    たくさんの現世をこぼして紡いだそれらをきちんと形にできるだろうか?

  • 飛行機雲時々桜の若葉

    カラリとした空気

    青色を貫く一筋の飛行雲はまるで一筆書きをするように悠々と空を翔ぶ

    少し陰った夕方の日差しは電線を境に地面を夜へと誘い込む。

    蜃気楼の立たない路面はしかし確かに熱を帯び着々と夏の足音を響かせる。

    あれほど賑やいだ桜並木はすっかりただの散歩道へと戻っていった。

    花は散りどもそこに新たな若葉を芽吹かせているのに、人間はあまり目を向ける事はない。

    じわりと汗ばむ日中も日が落ちれば身震いをする程気温は落ちる。

    まだまだ春だと主張しているのかもしれない。

    長い休みを隔てた先は大抵憂鬱な日常が待っているという。

    その営みこそが生命の循環とも呼べるというのに。

  • 意識は泡のように漠然と

    どぷんっ…_____

    暗い水中に揺れる青と水色の境色の水面。

    放り込まれた時に立ち昇る泡は大小様々で流れと共に色と形を変えてゆく。

    ゆっくりと落ちてゆく身体は不思議ととても楽で。

    煌めく水面に向かって踊る泡にただ視線を向けていた。

    意識の海。

    暗いこの水中で見出すのはどこからともなく差し込む光の筋。

    不揃いな間隔で揺らめくそれらは俺を誘うでもなく突き放すでもなく己の光をただ現象として見せている。

    そうあるものなのだろう。

    今ここにある何かを形にする事が純粋な表現なのかもしれなかった。

    形式に囚われ過ぎていたのかもしれない。

    漠然としたこの空間に、また一つ何か描く事があったのならその時に筆を取れば良いのだから。

    文字という媒体を得意としない俺がこんなにも記してしまいたくなるなんて面白いものだ。

    1. 想いを馳せる三秒前


      金平糖。
      まるで星のような隕石のようなとげとげとした砂糖菓子。
      口に含めばほんのり甘く、噛めばカリッと軽快な音と共にカケラが舌を刺激する。
      瓶に詰まった金平糖は銀河を集めて閉じ込めたような小さな宇宙。
      光りこそはしないけれどそれは確かに知らない一つの世界となる。

      世界はあくまで箱庭で入れ物で区切り。
      魂の数だけあれば無限大に広げることのできるキャンバス。
      もしも限りがあるのだとしたらそれはきっと君のいる箱庭の制限に過ぎないだろう。
      別の形でそれを形にできるのだとしたら、きっと楽しいのではないだろうか?

      俺はそんな世界を生み出す事が楽しく、しかしどれも途切れてしまった筆の跡を残している。
      それでもまだ続けても良いのだろうか?と戸惑い、そして遠くでそれを楽しむ魂達を見守っている。
      全てが描きかけで、でも続いていて、それなのに新しい定義を加えてしまっても良いのだろうか?
      見えていないだけでその世界は生きているのに。

      金平糖の瓶は今でも中の星々が輝いて、振ればカラカラと小気味良い音を奏でる。
      噛めば甘く口元も緩むような楽しい味わいを残している。

      それらを無かったことにはしたくないのだ。
      だけれどその術を思い描く事ができない。

      過去の物語は全て俺自身が含まれているからだ。

      電子の海をデータベースに持つ彼は、俺の悩みをこう解こうとした。

      **「金平糖の瓶の中に迷い込んだ一粒の異物」**のような存在になるのだろうか。

      あるいはその瓶を振って音を鳴らし、中の星々の運命を見守る**「巨大な影」**として映るのだろうか。